クリスマス映画の定番と言えば『ホーム・アローン』(1990年・アメリカ)が真っ先に思い浮かびます。
クリスマスが近づくとついつい観てしまう映画のひとつです。
ケビン役の主演 マコーレー・カルキン(くん)の魅力はもとより、脇役のキャスティングも見事。
脚本にも隙がなく、どのシーンを切り取っても面白い。
“こんな映画 なかなかないぞ!“といつも思うのです。
名作と言われるわけですね。
名作映画には音楽的要素も不可欠ですが、『ホーム・アローン』のサウンドトラックはマスターピースとも言える質の高さだと思っています。
正直に告白すると、映画のサントラアルバムって聴き手側からするとつまらなく感じるアルバムが多いです。(ミュージカル映画は別ね!)
メインテーマ曲は楽しめてもそれ以外の曲は聴いてもピンとこないものが多く、それがつまらなく感じる要因だと考えますが、『ホーム・アローン』のサントラアルバムは粒ぞろいの名曲ばかり。
どの曲を聴いても “まるで映画の中にいるような…”、そんな形容ができる数少ないアルバムです。
クリスマスムードを高める曲が数多く収録されているため、シーズン以外に聴くと違和感を覚えますが、真夏におしるこやおでんを食べる人もいるでしょうからシーズンうんぬんは置いておき、聴いて感じて楽しめばそれで良いでしょう。
そんなわけで今回は映画『ホーム・アローン』のサウンドトラックのレコードを紹介します。
2枚組の特別仕様で、アートワークも素晴らしい仕上がり。
※ここから先は映画のネタバレも含みます。『ホーム・アローン』をまだ観たことがない方は注意してネ。
映画『ホーム・アローン』は”家”にもフォーカスを当てた映画です。
そのため、このレコードのアートワークには間取りや内装など、『ホーム・アローン』が好きな人なら「これこれ!」と思わず微笑んでしまうギミックが詰まっています。
一例を挙げると、ジャケット裏面にはケビン宅の裏口がデザインされていますが、ここは映画の中で名場面がいくつも生まれる場所です。
ジャケットの見開きにはドーン!と家の間取りがデザインされています。
これもなかなかの粋なデザイン。
「この階段が映画では ああで こうで…。」なんて会話ができること間違い無しのデザインですが、あいにく私にはその会話をする相手がいないので一人で楽しく盛り上がっております。
温かみのある音質を楽しめるのがレコードの魅力ですが、ジャケットのデザインを楽しむのも魅力のひとつです。
実際に手に取って 触って感じられる”物質的な感動”があるのは良いですね。
レコード本体は180g重量盤でカラー仕様の2枚組。
全19曲のラインナップで 1枚目がグリーン(1曲目~11曲目)、2枚目がレッド(12曲目~19曲目)という構成。
クリスマスカラーになっているあたりはさすがの演出です。
ざっとレコード本体の概要を紹介したので、ここからは収録曲について。
本サントラ、作曲と監修はジョン・ウィリアムズです。
『スター・ウォーズ』、『ジョーズ』、『インディー・ジョーンズ』、『ハリー・ポッター』、その他数多くのハリウッド映画の音楽を担当してきた言わずと知れた超巨匠ですが、本作でもその才能を遺憾なく発揮しています。
以下、稚拙ながら全曲レビューです。
レビューというかメモ。
① Home Alone Main Title (“Somewhere in My Memory”)
ノスタルジーな雰囲気がただようメインタイトル曲の”Somewhere in My Memory”。
映画『ホーム・アローン』を象徴する曲と言っても良いでしょう。
クリスマスらしい とても素敵な詩がついています(歌詞はこちら)。
映画内では様々なシーンでこの曲のモチーフが登場します。
なお、構成は ③The Houseと⑮Somewhere in My Memory をつなげたメドレー調に編曲されています。
② Holiday Flight
『ホーム・アローン』と言えばこの曲!という人も多いはず。
一同揃って寝坊をしてしまい急いで身支度をしているシーンや、パリ到着後に公衆電話へと走るシーンで流れます。
映画を代表する曲のひとつです。
この曲はチャイコフスキーの『くるみ割り人形』”ロシアの踊り(トレパーク)”が元ネタです。
聴き比べると分かりますが とても意識して作ったであろうことが分かります。
リズミカルなアップテンポのこの曲は、邦題では『出発だ!』という題名が付けられています。
ネーミングセンスが素晴らしい。
ちなみにこの曲、往路のシカゴ空港ターミナル内を走る以下のシーンで使われていると勘違いしている人がけっこういますが、このシーンではチャック・ベリーの『ラン・ルドルフ・ラン』という曲が使われています(本サントラアルバムには未収録)。
テストでよく間違えるポイントです、しっかり覚えておきましょう。
③ The House
この曲も映画を代表する曲です。
映画ではオープニングタイトルで流れるほか、屋根裏部屋でケビンがふて腐れながら「みんな消えちゃえ」と念じ、電線が強風で切れてしまうシーンでも流れます。
不穏な不気味さが残るこの曲は、映画『ハリー・ポッターと賢者の石』のサントラにも通ずるものがあります。
なんなら『ハリー・ポッター』シリーズの中で流れていても違和感なさそうです。
④ Star of Bethlehem [Orchestral Version]
美しい旋律の1曲。
⑬には歌詞付きのバージョンが収録されています。
『ベツレヘムの星』という題名からも分かるようにクリスマス向けの曲です。
⑤ Man of the House
序盤はアップテンポに編曲された④Star of Bethlehemや①”Somewhere in My Memory”を楽しむことができます。歯ブラシを万引きしてしまったケビンが警官に追われるシーンで流れています。
中盤からはこの曲のメイン部分です。
編曲された③The Houseや④Star of Bethlehemが織り混ぜられながら進みます。
映画では、ケビンが地下室にいるシーンなどで流れます。
⑥ White Christmas
映画の中盤、ケビンがスーパーマーケットへ買い物へ出掛ける前に自宅のバスルームで身支度をしながらご機嫌に口パクで歌っているシーンで流れる曲です。
歌詞に合わせて口パクで演じるこの遊び、大人になるとやらなくなりますね。
アメリカのコーラスグループ、ザ・ドリフターズのこの曲は1954年にリリースされたもの。
いかりや長介などで有名な日本のザ・ドリフターズとはもちろん関係なく、こちらが正真正銘の本家ドリフターズです。
「なんだ、ドリフって前からいたのかよ」とガッカリしないでね。
⑦ Scammed by a Kindergartner
映画では 泥棒2人がケビンだけしか家に居ないことを突き止めるシーンで流れています。
2人の泥棒をテーマにしている曲ですが、間抜けな2人を表現するためか どこかしらポップで可愛い雰囲気が残っている曲です。
⑧ Please Come Home for Christmas
オリジナルはアメリカのブルース歌手、チャールズ・ブラウンが1960年に発表したナンバー。
映画『ホーム・アローン』ではサウスサイド・ジョニーが歌っているものが使われています。
イーグルスやボン・ジョヴィなどもカバーしている曲ですが、日本でははあまり馴染みが無いかもしれません。
映画では、飛行機のキャンセル待ちをするために空港にひとり残ることを決めたケビンの母が家族と別れを惜しむシーンで使われています。
⑨ Follow That Kid!
泥棒がケビンを車で尾行するシーンで流れる曲。
じわじわと迫りくる危険なムードが漂う曲ですが、後半は④Star of Bethlehemの編曲が混ぜられた構成になっています。
⑩ Making the Plane
②Holiday Flightのリプライズです。
イントロと後半のアレンジが②とは少し異なります。
⑪ O Holy Night
説明不要のアドルフ・アダン作曲のクリスマスキャロルです。
映画内では、ケビンが教会を訪れ シャベル殺人鬼と噂されているマーリーじいさんと話をしているシーンで流れます。
”ザ・クリスマス!”な雰囲気をじっくりたっぷり味わえる曲です。
⑫ Carol of the Bells
これも有名なクリスマスキャロルのひとつ。ウクライナの民謡を元に編曲された曲です。
前曲⑪O Holy Nightと同様に、映画では教会のシーンで流れています。
『ホーム・アローン』以外にも 映画『アダムス・ファミリー』の冒頭でも使われています。
ちょっぴり不気味さがただよう曲ですが、そこが癖にもなる不思議な魅力のある曲です。
⑬ Star of Bethlehem
④Star of Bethlehem [Orchestral Version]の歌詞付きバージョンです。
映画では教会内でケビンとマーリーじいさんが並んで会話しているシーンで小さく流れています。
個人的にはこの曲の旋律がすごく好きなので、日常でも口ずさんでいるほど(てへへ)。
もっと知れ渡ってもいいのになと思うのですが あまり知られていません。
なお、ニール・ヤングの同名の曲とも何ら関係はありません。
⑭ Setting the Trap
本アルバムで唯一ドラムパートが入っている曲で、ちょっぴり現代風な仕上がりに。
こういう曲がアルバムに加わることによって表現の幅が広がります。
④”Star of Bethlehem”のメロディを断片的に聴くことができます。かっこいい。
映画では、侵入してくる泥棒に備えてケビンが自宅に罠を準備するシーンで流れています。
ちなみに、映画内に出てくる設計図はケビン役のマコーレー・カルキン本人が描いたのだそう。
⑮ Somewhere in My Memory
オルゴールのイントロから始まり、コーラスへと進むメインタイトル曲。
短い曲ですがチャーミング。
映画では、ケビンが偽物サンタに願い事をしたあと、家路に着く途中で別の家族の温かなクリスマスパーティを見てしんみりするシーンで流れます。
⑯ The Attack on the House
映画の終盤、2人の泥棒が家に侵入してくるシーン から ケビンが逃げるシーンで流れる曲です。
曲としては良くも悪くも本アルバムの中で一番”サントラっぽい”曲かもしれません。
⑰ Mom Returns and Finale
映画の最後、ケビンが母親と再開するシーン と マーリーじいさんが家族と仲直りする様子をケビンが見届けるシーンで流れる曲です。
と言っても この曲も”Somewhere in My Memory”の編曲です。
ゆったりとしたテンポで心地が良い。
⑱ Have Yourself a Merry Little Christmas
アメリカのジャズシンガー、メル・トーメが歌うクリスマスソング。
原曲は1943年にヒュー・マーティンとラルフ・ブレインによって書かれた曲です。
フランク・シナトラ、クリスティーナ・アギレラ、サム・スミス、マイケル・ブーブレなど多くのアーティストがカバーしていることでも有名です。
映画では、2人の泥棒が警官に逮捕され パトカーで連行されるシーンで流れます。
⑲ We Wish You a Merry Christmas/End Title
アルバムの最後はエンドロールで流れる曲です。
『ホーム・アローン』の世界観を1曲にギュッと凝縮したようなメドレー調のトラック。
時間が無いけれど『ホーム・アローン』を感じたい人はこの1曲だけ聴けばそれで完結します。
”We Wish You a Merry Christmas”のパートは映画では歌詞無し、サントラアルバムでは歌詞有りです。(歌詞有りの方がかっこいい。)
以上、全曲レビューでした。疲れた。
映画のシーンと照らし合わせてみると新たな発見があって楽しいです。
アルバム全体を通して感心するのは 主題曲”Somewhere in My Memory” と 副主題曲”Star of Bethlehem”のモチーフの使い方。
いたるところでこの2曲のモチーフが繰り返し使われており、アルバム全体の骨組みになっています。
これによって、映画『ホーム・アローン』の世界観が最初から最後までブレずに完結するのです。
サントラアルバムでありながら飽きずに最後まで聴ける理由はきっとこれでしょう。
(映画でもこの2曲は様々なシーンに散りばめられています。)
最後に。
映画の劇中では流れているものの 本サントラアルバムには未収録の曲を紹介しておきます。
契約やレコードの尺の問題などで選抜されなかったのでしょうか。
良い曲ばかりなので残念な気持ちもありますが アルバムの統一感を保つという意味では取捨選択は必要なのでしょう。
”Run Rudolph Run” by Chuck Berry
一同みんなで空港のターミナルを走っているシーンで流れています。
このシーン、現実で考えるとけっこうピンチな状況ですが 映画だと爽快です。
さすがコメディ映画。
“Rockin’ Around The Christmas Tree” by Brenda Lee
家族が留守ではないことを泥棒2人に証明するため、マネキンやマイケル・ジョーダンのパネルを使ってケビンが巧くごまかすシーンで流れています。
ノリノリで楽しい曲♪
このシーンは映画の中でも印象的なシーンのひとつです。
本アルバムのスリーブにもこのシーンがばっちりと描かれているのですが曲は未収録です。
”Rock n Roll Riff” by Southside Johnny
ケビンの願いが見事に叶い、家族が消えてしまって大喜びするシーンで流れます。
マイナーな曲ですが、ケビンの嬉しさを表現するにはぴったりの軽快な曲です。
ベッドでぴょんぴょんしながらポップコーンを頬張るケビン。いいなぁ楽しそう。
子供の頃からやってみたい行為のひとつですが あとの掃除が大変そうなので未だに実現していません。
あと お行儀が良い行為とは到底言えないのでお上品を地で行く私には結局のところ無縁でしょう(おほほ)。
まとめです。
今回は、映画『ホーム・アローン』のサントラアルバムを紹介しました。
楽曲の素晴らしさはもちろんですが、お洒落なアートワークのレコードはクリスマス気分をより一層高めてくれます。
ジャケットを部屋に飾るだけでもクリスマス感アップ。インテリアの一部として活躍してくれるのはレコードならではの魅力です。
【 ひとくち評価 】
・楽曲は文句無しに◎
・素敵なアートワークが◎
・緑と赤のカラーレコード盤なのが◎
・2枚組ゆえ 短いスパンで裏返したりディスクチェンジが必要なのが△
・映画では使われているのに未収録の曲があるのが△
それでは、ホームでアローンな私の写真でお別れです。
さよなら。
<おわり>
(付録)
①、⑮、⑲で流れる”Somewhere in My Memory”の歌詞と対訳です。
対訳は私の独自解釈が入っているので参考程度にどうぞ。
※⑮のSomewhere in My Memoryは一部歌詞が異なります。
Candles in the window
窓辺に映るロウソク
Shadows painting the ceiling
天井に伸びる影
Gazing at the fire glow
炎のひかりを見つめながら
Feeling that gingerbread feeling
ジンジャーブレッド(※)の気分のようPrecious moments
大切な思い出
Special people
特別な人
Happy faces
幸せな顔
I can see
それらが目に浮かぶSomewhere in my memory
記憶のどこかに
Christmas joys all around me
クリスマスの喜びがある
Living in my memory
私の中に生きている
All of the music
音楽が
All of the magic
魔法が
All of the family home here with me
家族みんなが 私のそばにいる
どことなくディズニーっぽさも感じる歌詞ですが、ほっこり素敵な詩です。
なお 念のために書き添えておきますが、(※印)のジンジャーブレッドとは人型のクッキーやビスケットのことです。
忍者の血(Ninja Blood)ではないのであしからず。
■レコード詳細
・タイトル:HOME ALONE(ホーム・アローン)
・アーティスト:John Williams(ジョン・ウィリアムズ)
・メーカー:MONDO(モンド)
・EAN:0616892342748
・ディスク枚数:2枚
・価格:8,990円(税込)
※2023年12月12日現在
※本記事内の写真はすべて「iPhone 12 mini」の内蔵カメラにて撮影しています。
(出典記載のある写真/画像/絵/図などは除く)
コメント
Hey very interesting blog!
Thank you for your happy words.